水害は、工場の浸水による生産停止、オフィスの浸水による営業活動停止など企業に様々な影響を及ぼします。
大規模な水害下においては、従業員の怪我・死亡、企業の倒産に至るケースも0ではありません。
被害の最小化、迅速な復旧をするためにも、企業は事前に適切な水害対策を施しておく必要があるでしょう。
本記事では、企業にとって大きなリスクである「水害」に焦点を当て、2022年に発生した主な水害、水害の種類、水害の対策などを解説していきます。
異常気象が多くなりつつある昨今。「水害リスクを最小限に抑えたい」「どんな水害が発生し得るかを事前に把握しておきたい」などと考える事業者様は、ぜひご覧ください。
2022年夏における特筆すべき大雨災害
近年、降雨は激化しています。
30年前に比べ、大雨(1日あたり200ミリ以上)の頻度は1.6倍に、ゲリラ豪雨(1時間あたり50ミリ以上)は1.4倍に増えています。
また、連続降雨量も増えており、2018年、2019年では12~72時間内の合計降水量の観測史上1位を更新しています。
雨の降り方がこれほど大きく変化している理由の一つが地球温暖化です。
また、都市化も水害被害を大きくしています。従来浸水しやすい低地を宅地開発することも、都市化の一つです。
このまま温暖化が進むと22世紀には大雨・ゲリラ豪雨の頻度が20倍以上になるという予測があります。
それではこの夏に発生した東北の記録的な大雨をいくつか見てみましょう。
宮城県では7月15日から16日にかけて発達した雨雲が流れ込み、東松島市や松島町、大郷町などで猛烈な雨が降り、気象庁は「記録的短時間大雨情報」を発表。
24時間の降水量は、宮城県大崎市古川で239mm、栗原市築館で216mmと、平年の7月1か月分を上回る記録的な大雨となっています。
これにより土砂災害の危険性が非常に高くなり、「土砂災害警戒情報」が発表。その他、氾濫の危険性が高い「氾濫危険水位」を超えている川も出ました。
8月10日には、停滞前線の影響により青森県や秋田県で平年の8月1か月分を上回るなどの記録的な大雨が発生し、数々の被害が発生しています。
山形県では文化財である天養寺観音堂の建物全体がずれたり、青森の鰺ヶ沢町では少なくとも400棟が浸水したりしています。
また、秋田県三種町では川が氾濫し、町において最も高い警戒レベル5の「緊急安全確保」を発令されています。
情報参照元:福井新聞、温暖化から日本を守る、気象庁HP、HUFFPOST、国立環境研究所、NHK
2022年夏の台風の傾向
7月上旬にはこの時期には珍しく台風も上陸しています。
高知県では短時間で集中豪雨を発生させる「線状降水帯」が発生し、同県中土佐町では土砂災害も起こっています。
同じく高知県須崎市では、3時間で208mmの雨が降り、こちらは観測史上最多となっています。
また、福岡、熊本、長崎など九州北部では、1時間に100mm以上の雨が降り、土砂災害や河川氾濫の危険性が高まりました。
こちらの要因は、太平洋高気圧です。高気圧が日本列島で発生し、それに沿うように台風が日本に向け進路を変更・上陸しました。
2022年の台風は、平年よりも台風の発生数も少なく、不活発である可能性が高いです。
これはラニーニャ現象(=海面水温が低くなる減少)の影響です。
気象庁が調べた海面水温のデータから、現在発生中のラニーニャ現象下では、2022年の台風の発生位置は平年より西寄りになると予測されています。
台風の勢力を強める一つの要因は、台風が海面水温が高い地域の通過時間が長いことです。
通年よりも西寄りで発生した台風は、この通過時間が短くなり、台風の寿命・勢力も抑えられると考えられます。
台風の進路は、7月~8月は台風は主に中国大陸・朝鮮半島方面、9月以降は沖縄・本州に進むと予想されています。9月以降は台風が関東に接近する可能性も高いです。
今夏の台風は例年に比べて穏やかであると予想されていますが、これはあくまで予想です。
台風の強度・進路を左右するのは海面水温や気圧配置ですが、これらは常に変化していきます。
思わぬ被害に合わないためにも、早めに水害対策をすることが重要です。
情報参照元
水害の種類にはどんなものがある?
日本国内で過去10年間で水害に無縁だったのは、わずか56市区町村(3.2%)です。
その他の1,685市区町村(96.8%)では、過去10年間の間で1〜10回以上に水害に見舞われています。
九州・中国・四国・東海・首都圏・東北では豪雨・台風(総雨量が500ミリ~2000ミリ)では、河川の氾濫、堤防決壊、浸水被害、土砂崩れなどが発生し、多数の死者・行方不明者がでており、このような被害は、やはり毎年6月~7月の梅雨シーズンや8月~9月の台風シーズンに集中しているようです。
水害といっても種類はさまざまです。どのような水害があるか、以下で確認してみましょう。
- 洪水:豪雨や台風、雪解け水などにより、河川の大幅な増水することです。住宅が浸水する可能性があります。
- 氾濫:河川水位が上昇し、水が溢れ出すことです。
- 外水氾濫:河川の水位が堤防を超えてしまうことです。
- 内水氾濫:地域の排水機能を上回る降雨があった場合に発生する水害です。マンホール・下水道からの逆流する可能性があります。
- 高潮:台風を含む低気圧の経過により、海面水位が上昇することです。
- 波浪:強風によって波がうねることです。
- 津波:地震などにより海底が隆起し、海面が上昇することです。大きな津波は東日本大震災のように街全体を飲み込み、街を壊滅状態にする危険性もあります。
情報参照:みんなのBCP
インフラ・ライフライン施設の被害想定
仮に荒川右岸低地氾濫および東京湾高潮氾濫があった場合、インフラやライフラインが受ける被害はどれほど大きいのでしょうか。復旧期間と併せて見てみましょう。
- 電力
荒川右岸低地氾濫では東京都・埼玉県最大約 111 万軒、東京湾高潮氾濫では、千葉県・東京都 ・神奈川県で最大約 98 万軒の停電被害の発生が想定されます。東京電力の設備復旧だけでも 2~3 週間程度です。
- ガス
荒川右岸低地氾濫では埼玉県・東京都で最大約 49 万件、東京湾高潮氾濫では東京湾沿岸の千葉県・東京都・神奈川県で約 68 万件のガスの供給支障が想定されます。復旧期間は、数週間程度です。
- 上水道
荒川右岸低地氾濫では、埼玉県の約 284 万人への影響が想定されます。復旧は、浸水が解消してから数ヶ月程度です。浸水時は埼玉県の県営大久保浄水場(さいたま市)が機能停止し、長期的な断水の可能性があります。東京都での支障は、なしの想定です。
東京湾高潮氾濫でも、東京都・横浜市・川崎市などの上水道設備の多くは浸水範囲外・高台に設置されているため、大きな影響はありません。千葉県の市川市、浦安市にて一時的な減水の可能性はあれど、全体的な影響は極めて低いです。
- 下水道
荒川右岸低地氾濫では最大約 399 万人、東京湾高潮氾濫では、最大約 638 万人が汚水処理に支障が生じる想定です。復旧期間は、数ヶ月程度です。
- 通信
長期停電時は、荒川右岸低地氾濫では最大22万、東京湾高潮氾濫では最大87万件の固定電話回線に影響が出ます。停電の復旧に伴い、概ねサービスは復旧します。
重要設備が破損した場合は、復旧期間は 3 ヶ月程度です。携帯電話は、停電や通信ケーブル断線によって、エリア内の携帯電話が不通になります。
「令和2年7月豪雨」では、大雨により、停電、土砂崩れ等による回線断等の影響で、多くの携帯電話基地局が停波するという事態が起こりました。周辺基地局から補完による仮復旧は数日程度、本復旧には数ヶ月以上です。
※いずれの場合も、復旧期間は浸水解消からの期間であり、被災規模によって長期化します。
参照:
<<さいごに>>
いかがだったでしょうか?今年2022年は、局地的大雨だけでなく、ゲリラ豪雨も昨年より回数が多いと言われているため、しっかり水害に備える必要がありそうです。
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