
油汚れを取るために
クリーニングで当たり前のように使う洗剤。でもなぜ水だけではダメなのでしょうか? 洗剤を入れるのと入れないのではどんな違いがあるのでしょう?
クリーニングでは水を使ってカーペットなどの繊維素材をキレイにしようとします。そこにはいろいろな種類の汚れがあります。ざっくり分けると、水に溶ける汚れと溶けない汚れです。
では油汚れはどうでしょう?水と油、皆さんご存知の通りあまり仲良くありません。反発し合います。そんな関係なので水の中に溶け込んではくれません。簡単に言えば弾かれてしまいます。
では水に反発する油汚れをどうやって水でキレイにすればいいのか?そこで活躍するのが洗剤に入っている界面活性剤です。界面活性剤、聞いたことはあるけど…という方も多いのではないでしょうか? この界面活性剤、簡単に言うと油が反発する力を発揮できないようにして油汚れを水の中に取り込めるようにする物質です。
界面活性剤とは?
界面活性剤は油が好きな部分(親油基)と水が好きな部分(親水気)の両方を持ち合わせている分子構造となっています。油が好きな部分は油と、水が好きな部分は水と一体化したい性質を持っています。一方、親油基は水が嫌い(嫌水性)で親水基は油が嫌い(嫌油性)という性質も持っています。

油汚れに界面活性剤が含まれている洗剤を用いると、親油基は油汚れと一体化したいのでその中に突っ込んでいきます。一方、親水基は洗剤液という水の中に溶け込んでいますから油の方には行きたくなく、水の中に留まっていようとします。
そうするとその分子の一部は油汚れに刺さった状態になりその反対側は水の中に残っている、という状態になります。(図の左)これが連続して多くの界面活性剤分子が油汚れに刺さっていくと油汚れは繊維などの表面にくっついていられなくなってしまいます(図の右)。
まりも、またはボールにマチ針がたくさん刺さっているみたいですね。では、繊維表面にくっついていられない油汚れはどこへ? そう、洗剤液という水の中に漂うことになります。このように、洗剤に含まれている界面活性剤が油汚れの反発を弱めて汚れをいわば洗剤液の中に取り込んでいくわけです。つまり、水を用いて油汚れを洗い流すことができるようになるわけです。

また界面活性剤は水の持つ表面張力の力を弱める働きもします。ただの水だと濡らし難いナイロンなどの化学繊維もそのおかげで濡らしやすくなります。つまり繊維内にある汚れに洗剤が届きやすくなります。結果、汚れを除去しやすくなるというわけです。すごい発明ですよね!
再汚染を防ぐために
この界面活性剤は一度油汚れと一体化するともう2度と離れません。永遠の愛です(笑)。上の図にあるように一旦「まりも状態」になってしまうとその突き出ているところがあるため、もう一度繊維表面に付着することができません。つまり、汚れが洗剤液に溶け込んだあと時間をおいても、繊維が洗剤液の汚れによって再び汚染されることがないのです。ただし汚れが溶け込んだあとそのまま乾燥させてしまうのはNGです。汚れを取り込んだ界面活性剤は乾くと油汚れに変身してしまいます。水分があるうちにきちんとリンスしましょう。
油汚れのない現場などほぼありません。界面活性剤の働きにより私たちのクリーニング作業が楽になりしかも再汚染の心配なく実行できるようになりました。洗剤を上手に活用することにより、作業をより効果的にすることもできますし、同じ努力でさらにキレイにすることができるでしょう。